こんにちは。
これまでの不動産取引では、契約書の書面交付や押印が法律で義務付けられており、契約締結には多くの手間と時間がかかっていました。不動産事業者にとっても、お客様にとっても、大きな負担となる場面は少なくなかったでしょう。
そうした状況が大きく変わったのが、2022年5月の宅建業法改正です。この改正により、賃貸借契約や売買契約の重要事項説明をオンラインで行う「IT重説」や、契約書のやり取りを電子データで完結できる「電子契約」が全面的に認められるようになりました。不動産取引も、いよいよ本格的にペーパーレス化が進んでいます。
今回は、不動産営業担当者が押さえておきたい「電子契約・IT重説」の導入メリットを解説します。皆さんのご参考にしていただけると嬉しいです。
不動産業界における電子契約の4つの導入メリット
不動産業界における電子契約の導入は、単なる“書類のデジタル化”にとどまりません。契約手続きのスピードアップ、コスト削減、業務効率の向上、そして顧客満足度の向上といった、営業活動全体にポジティブな影響をもたらします。
ここでは、電子契約を導入することで得られる代表的な4つのメリットをご紹介します。
契約締結までのスピードが飛躍的に向上
従来の紙契約では、契約書を印刷・郵送し、複数の当事者間を持ち回って押印を集める手間が発生していました。不動産取引は関係者が多く、1つの押印の遅れが全体の進行を止めることもしばしば。しかし、電子契約を導入すれば、PDF形式の契約書を即時送信・署名できるため、契約締結までの時間が大幅に短縮されます。契約内容に修正が生じた場合も、即座に再送信・再署名が可能です。
印紙税のコストをカット
不動産売買や賃貸契約書など、紙の契約書には印紙税が発生します。契約額が大きくなればなるほど、印紙税も高額になってしまいます。しかし、電子契約ではこの印紙税が不要です。印紙税法に基づき、「紙の文書」でない限り課税対象とならないため、年間を通じて多くの契約を取り扱う業者にとっては大幅なコスト削減につながります。
書類の保管・検索がラクになる
契約書類は法律上の保管義務があるため、紙での管理には物理的スペースと手間がかかります。一方、電子契約ならクラウド上でデータ管理が可能です。また、ファイル名や検索タグを活用すれば、過去の契約書類をすぐに見つけやすくなりますね。
オフィススペースの有効活用にもつながり、働き方改革の一環としても注目されています。
消費者ニーズに応えるオンライン対応
2021年の調査によると、8割以上の消費者が「不動産契約もオンラインで完結させたい」と回答しています。コロナ禍による非対面志向が強まる中、オンラインでの内見や契約希望は今後も増加する見込みです。電子契約・IT重説の導入は、そうした時代のニーズに対応した「選ばれる営業」になるための重要な一手と言えるでしょう。
電子契約・IT重説の導入時に注意すべきポイントと導入の流れ
電子契約やIT重説には多くのメリットがある一方で、スムーズな導入のためには事前に押さえておきたい点もあります。また、どのような流れで契約を進めていくのか理解しておくことも、不動産営業においては重要ですね。
この章では、導入時に気をつけたいポイントと、実際の契約プロセスをわかりやすく解説します。
電子契約導入前に確認しておきたい3つの注意点
電子契約を導入することで、業務効率やコスト面で大きな効果が期待できますが、導入前に確認すべきポイントを見落としてしまうと、思わぬトラブルにつながる可能性もあります。スムーズかつ安全に活用するためには、どのような点に注意すべきなのでしょうか。
ここでは、導入前に押さえておきたい3つの重要なポイントを紹介します。
◆専用サービスの活用で効率化を図る
自社でシステムを構築するのは非現実的。クラウド型の電子契約サービス(例:GMOサイン)を利用すれば、低コストかつ短期間で導入が可能です。
◆セキュリティ対策を徹底する
契約書という重要データを扱う以上、情報漏洩のリスクが考えられます。ISO/IEC 27001などの認証を取得している信頼性の高いサービスを選びましょう。
◆取引先の理解を得る
いくら自社が電子契約に前向きでも、契約は双方合意があってこそ成立します。導入前には相手方へ丁寧な説明を行い、十分な理解と承諾を得ることが肝心です。
賃貸契約を例とした導入の流れ
実際に電子契約を導入すると、どのような流れで契約が進むのか気になる方も多いのではないでしょうか。ここでは、賃貸契約を例に、物件探しから契約締結までの一連の流れを追いながら、電子契約やIT重説がどの場面でどのように活用されるのかを具体的にご紹介します。
◆物件案内・内見(オンラインも可)
オンラインの場合は、Zoom等を活用すれば、遠隔地からの案内もスムーズです。
◆入居申し込み(Webフォーム対応)
書面に代わってオンライン申し込みが主流になりつつあります。
◆契約書の電子作成(PDF化)
書類のやり取りや修正もオンラインで行うことができます。
◆IT重説の実施(オンライン説明)
宅建士がビデオ会議で重要事項を説明する。事前に資料送付し、記録も保存します。
◆契約締結(電子署名)
書面での押印に代わり、電子署名を行うだけ。わずか数分で契約完了です。
このように、電子契約とIT重説を活用すれば、物件案内から契約完了まで、すべての手続きをオンライン上で完結することが可能です。時間や場所にとらわれず、スムーズで効率的に契約を進められる点は、忙しい現代のライフスタイルにぴったりですね。不動産業務の現場においても、今後ますますこうしたデジタル化の流れが加速していくでしょう。
まとめ
紙中心の業務から脱却し、ペーパーレス化を進めることは、不動産営業にとってもはや選択肢ではなく「必要な進化」とも言えます。「契約のスピードが変われば、営業効率が変わる」と言われているように、電子契約とIT重説を導入することで、契約スピードが向上し、コストも削減できることから、顧客満足度の向上にもつながりますね。
みなさんの参考になれば嬉しいです。
お読みいただきありがとうございました。