こんにちは。
現在、不動産業界を取り巻く環境はかつてないほどに変化しており、物件紹介と仲介手数料だけに依存するビジネスモデルでは難しく、「収益の多角化」と「顧客体験の向上」が企業成長のキーワードとなっています。

今回は、不動産事業における付帯商品の重要性とその活用方法について解説します。
不動産営業職の方はもちろん、他の業務に従事されているみなさんのご参考になると嬉しいです。

なぜ今、付帯商品が不動産経営の鍵を握るのか?

付帯商品とは、引越しサービスや火災・家財保険の手続きなど、物件契約時に不動産会社を通じて提供される、住まいに関わる追加サービスや商品のことを指します。物件選びから始まり、引越し、ライフラインの契約、保険の加入など、引越しには多くの手間がかかります。こうした煩雑な作業をまとめてサポートできるのが、付帯商品の最大の強みです。さらに、現代の多様化したニーズやライフスタイル、社会的なトレンドに応じたサービス提案を行うことで、不動産会社は顧客満足度を高めながら、新たな収益機会を生み出すことができます。

多様化する顧客ニーズに応えるワンストップの価値

引越しに伴う手続きは、電気・ガス・水道の契約、インターネット回線の手配、引越し業者の選定、保険の加入など、非常に多岐にわたります。これらをそれぞれ個別に行うのは、入居者にとって大きな負担です。

もしこれらの手続きを「物件契約のついでに」不動産会社がまとめて案内・取次してくれたら、入居者の負担は大きく軽減されるでしょう。「この会社に任せれば、すべてスムーズに進む」という印象は、大きな信頼感につながります。

また、顧客ニーズの多様化も見逃せません。たとえば、単身女性であればホームセキュリティや24時間駆け付けサービス、子育て世帯なら保険や浄水器、高齢者世帯には見守りサービスなどが有効です。こうした属性に応じた提案は、顧客満足度の向上につながります。

収益の柱としてのポテンシャル

多くの付帯商品には、契約件数や紹介数に応じたインセンティブが発生します。特にライフラインの取次や火災保険、引越し取次などは、高確率で成約に結びつきやすく、安定した収益源になります。

例えば、
・ライフライン取次|月間数十件の紹介で数万円規模の収益増
・火災・家財保険|1件あたり数千円〜1万円の手数料が発生
・引越し業者紹介|成約ごとにキックバックが発生
繁忙期や新生活シーズンには収益が急増し、閑散期の経営を支える「第二の柱」として機能します。

また、付帯サービスの提案体制が整っていることで、「物件+サービス」での差別化が可能となり、リピートや紹介といった営業効果も見込めるのです。

社会的トレンドを捉えた付帯商品も魅力的

現代の生活者は「安心」「健康」「利便性」を重視する傾向が強くなっています。例えば、防災意識の高まりに応える防災グッズの提供、健康志向に応えるフィットネスクラブ利用権、働き方の多様化に対応したテレワーク支援グッズなど、トレンドに合った付帯商品は、物件の魅力そのものを高めてくれます。

カテゴリ別!客単価を上げるための付帯商品ラインナップ

次に押さえておきたいのが「どの商品を、どのように提案するか」ということです。顧客の属性やライフスタイルに合わせて最適な商品を提案できれば、「ただの物件契約」が「トータルサポート」へと進化し、顧客満足度の向上と同時に客単価の大幅アップを実現できます。

ここでは、収益性や成約率の高い付帯商品をカテゴリ別に整理し、それぞれの特徴をみてみましょう。

生活インフラ系(高成約率・安定収益型)

新生活に必須の手続きに関するサービスは、提案のしやすさと成約率の高さが魅力です。特に引越し直後のタイミングに合わせた提案が効果的で、どの顧客にも共通するニーズのため、安定した収益が期待できます。

ライフライン取次ぎサービス

電気・ガス・水道・インターネット回線など、引越しに伴って必要となるライフラインの契約手続きを、不動産会社が一括で代行・取次するサービスです。
入居者はそれぞれの業者に連絡する手間を省けるため、利便性が非常に高く、申し込みのタイミングで提案しやすいのが特長です。不動産会社には、取次件数に応じてインセンティブが支払われるため、安定した副収益源として活用できます。

火災保険・家財保険

賃貸契約において、火災保険や家財保険の加入はほぼ必須条件となっています。不動産会社が代理店として提携している保険商品を紹介することで、契約ごとに手数料収入を得ることが可能です。
保険内容は、入居者のライフスタイルに合わせてカスタマイズ提案ができるため、「安心できる住環境」を訴求しながら自然な流れで提案できます。

引越し取次ぎサービス

入居者に提携する引越し業者を紹介し、見積もりや手配を代行するサービスです。初めての引越しや、忙しい社会人・ファミリー層にとって特に喜ばれる提案で、契約率も高いのが特徴です。
紹介件数に応じたキックバックがあるため、不動産会社にとっても収益性の高い商品となります。物件申込時など、早い段階での提案が効果的です。

安心・安全系(満足度・ロイヤリティ向上型)

暮らしの中で起こり得る「不安」や「トラブル」をサポートするサービスは、顧客満足度の向上に直結します。提案の際は、【安心感】をキーワードに訴求しましょう。

24時間駆け付けサービス

鍵の紛失、水漏れ、ガスの不具合など、生活上のトラブルに24時間対応できるサービスです。
入居者にとっては緊急時の強い味方となり、不動産会社にとっては営業時間外の対応負担を減らすという利点があります。保険商品と組み合わせて案内することで、説得力ある提案が可能です。

ホームセキュリティサービス

防犯対策として需要の高いサービスで、大手の警備会社と提携して提供するケースが一般的です。
特に単身女性や高齢者の入居者には大きな安心材料となり、物件の魅力そのものを高める効果があります。地域の治安状況や建物構造に応じて、導入のメリットを具体的に説明すると成約率が高まります。

見守りサービス

高齢者世帯を対象に、センサーや定期的な安否確認を通じて安心を提供するサービスです。
離れて暮らす家族にとっても価値が高く、提案するだけで信頼関係を深められる可能性があります。高齢化社会において、今後さらに需要が高まると言われている付帯商品の一つです。

ライフスタイル系(顧客の“豊かさ”を提案)

生活の質を高める商品は、入居後の快適さや充実感を演出し、長期的な満足度に繋がります。対話の中でニーズを引き出しながら提案すると効果的です。

家具・家電レンタルサービス

初期費用を抑えたい学生や新社会人、転勤の多いビジネスパーソンに人気のサービスです。冷蔵庫や洗濯機、テレビなどの生活必需品を必要な期間だけレンタルできるため、「身軽に引越したい」層に非常にマッチします。ネット回線や引越しサービスとのパッケージ提案も効果的です。

ハウスクリーニングサービス

共働き世帯や子育て世帯など、日々の家事に時間を割きにくい層に向けて喜ばれるサービスです。
入居前の清掃や、定期的なエアコンクリーニングなども含めて提案すれば、衛生面への配慮を重視する入居者からの支持を得やすくなります。

これらのように、付帯商品をカテゴリごとに整理し、顧客属性やタイミングに応じた提案を行うことで、成約率・単価・満足度のすべてをバランスよく高めることが可能です。不動産営業においては、物件の紹介に加えて「暮らしの価値」まで提案できるかどうかが、これからの鍵となります。

まとめ

付帯商品は単なる追加収益の手段ではなく、顧客の不安や手間を取り除き、提案した物件で心地よい生活を送ってもらうためのライフスタイルの提案です。不動産会社の視点では収益性の向上、入居者の視点では快適さと安心感の向上。この双方の利益をつなぐ戦略こそが、これからの営業活動において必要不可欠なスキルです。
「何をどこで提案するか」「どう語るか」次第で、付帯商品は“ついで”ではなく“顧客満足と収益性を最大化する武器”に変わります。
他社と差がつく「提案力」と「売上」を生む第一歩として、自社で提案可能な付帯商品を棚卸しし、営業現場で活用するためのシナリオを整備することから始めましょう。

みなさんの参考になれば嬉しいです。
お読みいただきありがとうございました。

おすすめの記事